2008年2月1日金曜日

パパ・ママ考

 私が時々覗いている某大手掲示板(2chではありませんよ)で、半年に一回くらいの割合で「親の呼称」関係のトピックがあがります。
 
 だいたいのトピ主さんの言いたいことは、
①最近は親が自分のことを「お父さん、お母さん」ではなく「パパ・ママ」と呼ばせている家庭をよくみかけるが、これは幼児語なのに、子どもが大人になってからもそのままなのか?
・・・というものと、
②日本には、ちゃんとお父さん、お母さんという言葉があるのにあえて外国人の真似をしてパパ・ママと呼ばせるのをどう思うか?というものです。
 
 そして、それらのトピックには毎回多くのレスがつきます。それだけ日頃そのことに関心を持っている人が多いのでしょう。  
 
 ①につくレスの多くは、「子供の方が恥ずかしがって、そのうち(少なくとも人前では)言い方を変えた」と言うものです。その一方、代々パパ・ママと呼んでいる家庭で年齢的におじさん、おばさんになっても、そのままの呼び方で通している家庭も結構あるようです。
 
 ②のほうは、パパママ派は「赤ちゃんに発音しやすいから理にかなっている」「パパ・ママのほうがおしゃれな感じ」「代々パパ・ママと呼んでいるから、その方が自然」「生活の欧米化がすすんでいるのだから親の呼び方も欧米化して何が悪い?パパ・ママに文句あるなら着物でも着て生活すれば?」「中国語でもパパ、ママと言う」というレスが多く、そうじゃない派は「子どもはそのうちちゃんと呼んでくれる。一歳くらいの子がまだ回らない舌でとーたん、かーたんと一所懸命呼んでくれるのもかわいい」「日本には日本の呼び方があるのになんでも西洋かぶれするのは浮かれすぎ」「グローバル化した社会だからこそ自国の伝統を尊重すべきでは?」という趣旨のレスが多いです。  
 
 さて、①についての私の考え: 欧米人20人に実際確かめたのですが、パパ・ママはラテン系の国やドイツで一般的です。また19世紀ごろのイギリスでも上流階級はフランス語風のパパ・ママを好んだ時代があったそうです。今は英語圏ではmom, dadが一般的ですが、ラテン系の移民も多いので英語圏でもmama, papaはありです。そして、彼らはおじさん・おばさんになっても、親の呼び方は変えないそうです。ただ幼児語としてのmommy, pappie, daddyなどはある程度の年齢になるとやめるそうです。また、公の場ではそれぞれの言語で正式な言い方をするそうです。例えば英語ならfather, motherというように。結局、日本の「とと」「かか」「お父ちゃん・お母ちゃん」が例えば英語ではdaddy, mommyで「お父さん・お母さん」がpapa, mamaとかdad, mom、「父」「母」がfather, motherと考えていいようですね。要するに、パパ、ママという言葉は幼児語とは言えないということです。 グローバルスタンダードでは、一生親のことをパパ・ママと呼んでも別に問題なしというわけです。

 ②についての考え:明治時代にはすでに(洋行帰り組みなどの一部の階層の中でしょうが)かなりの家庭で「パパ・ママ」は使われていたようです。明治36年に文部省がわざわざ、親の呼び方は日本人らしく「お父さん、お母さん」と呼ぶようにとお達しを出したほどですから。それまでは多くの家では「とーちゃん、かーちゃん」「おっとう、おっかあ」だったそうですが、パパ、ママ派も相当数いたのですね。ところで、そんな時代にパパ、ママを使っていた家庭ってかなり上流階級だったのではないでしょうか。当時のイギリスの上流階級の真似をしたのでしょうから。だから、dad, momでなく、パパ、ママなのでしょう。そして、昭和も戦後になってから、テレビが普及し、アニメやドラマの中でパパ、ママ(アメリカの影響でしょうになぜdad, momじゃないのか不思議)がしょっちゅう使われていると、庶民の間でも真似する家庭が出てきても不思議ではないですね。ただ、そういった家庭はどちらかと言うと少数派だったのではないでしょうか。少なくとも昭和40年代、私の周りではパパ・ママと呼んでいた子は学年120人くらいの中で数人だったと思います。まあ、3世代同居とかが多かった田舎ですからねぇ。核家族の多い地域だと違うかもしれませんね。 もちろんもともとパパ・ママが普通の階層が多い地域もあるのでしょうけどね。 あれから40年すっかりパパ・ママは市民権を得たようですね。 
 戦後テレビが普及してからパパ・ママ派になった家庭に限ってもかれこれもう2~3代くらいはその呼び方をしている場合もあるでしょう。中には途中からまた日本的呼称回帰もあるようですが。
 周りでまだ伝統的な言い方をする人が大多数な環境で、ある家庭で最初にパパ・ママを使う人達って、そうでない人たちとどこが違うのでしょう。わたしの個人的な印象としては、一つにはステイタス意識だと思います。職業、年収、容姿、学歴、家柄、豊富な海外渡航歴などなんらかのステイタス感を持ち、自信と幸福感の強い人達じゃないかしらと思います。一言で言うと中流意識ですね。 あとはあまり物事にこだわらず、「これいいね」と思うものは何でも取り入れるタイプ。なぜそう思うかと言うと、そうでない人たちはどうしても「照れ」があって使えないような気がするからです。また、あえて元々ある日本的な言い方を止めてまで外来語で親を呼ぶというのに違和感を感じてしまうからだと思いますしね。
 もちろん、親の呼称はそれぞれの考えで決める事で、どうあるべきと決め付けるのはおかしいというのは言うまでもありません。ある程度の年齢になって公の場でちゃんと「父」「母」が使えればまったくOKですから。

 こうして①②について考えながら、藤原正彦氏のことを思い出します。氏は『国家の品格』などで武士道など日本の良さを再確認する重要性を説いておられますが、お子さんにはパパと呼ばれており、しかもお子さんが成人してからも同じ呼び方をされている事が氏の著書や新聞のコラムから窺えます。最初は意外に思いましたが、上記に述べたように色々調べたり、考えたりしているうちに納得しました。藤原氏はお子さんが小さい頃は家族でイギリスにお住まいでしたから、パパと呼ばせるのは自然な事です。そして、この言葉は幼児語ではないので大人になったお子さん達が今でも同じように呼んでいるとしてもそれは自然な事なのですね。
 
 ところで、我が家はどちら派かというと、普段使う言葉くらいは日本人らしくしたいので、最初から「パパ・ママ」は選択肢にありません。「お父さん・、お母さん」か「お父ちゃん・お母ちゃん」かで少し迷い、結局一番スタンダードな「お父さん・お母さん」に決めました。確かに最初の頃は息子は「お父さん」がうまく言えなくて「たっくん」と言ったりしてましたが、2歳になる頃にはちゃんと「お父さん・お母さん」と言ってました。それに残念ながら、我々夫婦はパパ・ママと呼ばれるような柄ではないんですよね。一度息子がふざけてママと呼んできましたが、こっぱずかしいから「やめてくれ~」と叫んでしまいました。娘にいたっては小3の頃から「お父さん、お母さん」というのすら照れくさくなったようで、家のなかではDHのことを「おとうにゃん」(ネコかい!)、そしてわたしのことは「おかあやん」と呼んでいます。「やん」ですよ、「やん」(笑)私って娘から見ると「お母さん」っていう柄でもないのですね。「さん」をつけるのがもったいないと思われているんでしょうかね。

2 件のコメント:

ジョデイ さんのコメント...

週末にPCの調子が悪くなって、こちらになかなかおじゃま出来なくて、遅いコメントになりました。

親の呼び方、時代とともに変わってますよね。それに都会と地方でも違うし。今40台の東京の従兄弟たちは大きくなっても「パパ、ママ」でした。
昭和50年代ぐらいになってから、学校では「パパママ」はおかしいから「お父さんお母さん」と呼ばすべき、みたいな風潮が高まった、と記憶してるんです。幼児期は確かに発音も難しいし「パパ、ママ」の方が愛らしい響きがあるから良しとして、就学時には「お父さん、お母さん」と呼べるようにする。ということで、うちの子供たちも幼稚園の頃には「お母さん」と自然に呼べるようになってました。でも下の娘にはもう少し「ママ」って呼んでて欲しかったかな。今はもうホント憎たらしいんだけど。
そうそう、義母は息子夫婦である主人と私を「パパ、ママ」とよぶんですよねぇ~(^_^;) もう諦めてます。一応うまくいってる嫁姑なんですよ(笑)

yochanのところは娘さんがなかなかナイスですね!?ふふふ。 

小説ではそのまま「ちち」なんてのもあったかしら?壇一雄の「火宅の人」に出てきたような。間違ってたらごめんなさい。

yochan さんのコメント...

ジョディさん、いつも興味深いコメントありがとうございます。

 おお、ジョディさんの身近に、実際に40代で「パパ、ママ」を貫いてる方々がいらっしゃるのですね。やっぱり東京は島根とは違いますね。ライフスタイルが一般に違うからでしょうかね。
 
 昭和50年代ぐらいから、学校でそんな風潮が出てきていたとは知りませんでした。
 
 子どもが小さい頃に呼んでくれる「ママ」の甘美さはたまらないそうですね。まさに幸福と安らぎの象徴ですよね。我が家みたいな場合は「おかぁしゃん」がその代わりかな。でも、甘美さは残念ながらないかも。
 
 祖父母が孫を基準にして、息子や娘、嫁のことを「パパ、ママ」と呼ぶのって結構ありますよね。これは私の推測ですが、お義母さんからすると「お母さん」は自分のことを指す言い方で、嫁は「ママ」と呼んだほうがしっくり来るのかもしれませんね。
 
 「火宅の人」読んでないんですよ。すみません。でも、「ちち」「はは」と呼ぶ子も実際いるそうですね。