前から読もうと思いながら、実は一度も読んだことのなかった重松さんの作品。
一昨日、急に、ものすごく読みたくなって、中古本で3冊買い、この2日間で一気に3冊読みました。
『きみの友だち』
恵美とその同級生の何人かと、恵美の弟ブンの周りの何人かが、それぞれ主人公となった短編を合わせて、全体的に長編としてつながっている作品。普通の物語なら脇役にしかなれなさそうな子供にもスポットライトがあたっています。
最初の十数ページで泣いてしまいました。私の心の琴線に一番触れてくるのは、恵美のただ一人の友達、由香の優しさ、純粋さです。こんな子が本当にいるのかと思うほど、優しいのです。自分の心の汚さを思い知らされるとともに、その汚れが洗い流されるようなカタルシスを覚えました。
友達について考えさせられる本です。そして、恵美と由香の友情に胸が熱くありました。
そして、小・中学生のいじめについて。この作品に描かれているような流れで、いじめがエスカレートするのがもし、よくあることだとしたら、とても怖いと思いました。あまりにも身勝手で理不尽な首謀者と傍観者の思考パターンと、スケープゴートを常に必要としているかのような集団原理に戦慄を覚えます。もちろん大人の社会でもしばしば同様な現象が起こってるのでしょうが。
『卒業』
これは 4つの短編小説。それぞれの主人公が、家族について自分の抱える内面のとらわれから卒業する話。
「あおげば尊し」と「追伸」は涙なくして読めなかったです。
『ビタミンF』
言わずと知れた直木賞受賞作。
短編7編ですが、最初の「げんこつ」はいまいち共感できませんでした。次の「はずれくじ」も、「あるある、わかるな~。」とは思うけど今一つしっくりきませんでした。でも次の「パンドラ」あたりから、さすが直木賞受賞作! うまい!と思いました。 話が分かりやすくて入っていきやすい所に、比喩的表現がすごく的を得ているのです。
特に素晴らしいと思ったのが「セッちゃん」「なぎさホテルにて」の2編です。人物描写が巧みで、また、話を脇で助ける小道具がうまく効いているのです。
また、どの話も主人公が同年代で、回想場面の背景がどれも懐かしいです。ちなみに重松さんと私は生年月日が一日しか違わないことが分かりました。
ところで、本当は一番読みたかったけど中古本屋になかった『きよしこ』を、今日、本屋さんで(つまり定価で)買いました。 今夜寝る前に読むつもりです。
また、近いうちに、カズオ・イシグロ氏の本も3冊ア○○ンから届くので、そちらも読むのが楽しみです。
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