2013年2月3日日曜日

NHKドラマスペシャル「白洲次郎」

このドラマスペシャルは4年前に3回に分けて放送されたもので、ジェントルマン道を貫き、激動の昭和史を駆け抜けた風雲児・白洲次郎の謎に満ちた生涯を人気俳優・伊勢谷友介主演でドラマ化したシリーズ。

白洲次郎については、名前は聞いたことがあったけどどういう人かは、放送当時にkikiさんのブログでこのドラマのレビューを読んだ時に初めて知りました。夫人の白洲正子さんの方は知っていたのですが。
放送当時は見逃した上、再放送していた頃には興味がなくなり、というわけで見てなかったのですが、先般、年末年始用に今度こそと思い、3枚組DVD-BOXを購入しました。
でも、手元に置いて安心してしまい、購入からひと月以上経った今日、ようやく鑑賞とあいなりました。シリーズ全部で計6時間ですが、一日で飽きずに観れました。

さて、白洲次郎。
敗戦直後、GHQの某要人に「従順ならざる唯一の日本人」と言わしめたことで有名ですが、これほどお洒落でカッコイイ生き方をした日本人男性が実在していた事に驚くとともに嬉しくなりました。

他の何者にも媚びず、自分の良心こそが行動の規範。人から嫌われることを恐れず、ブレない。論理的思考かつ広い視野に基づいた合理的で自由な価値観。だからこそ、物事の本質を見極め、未来を見通すことができ、戦前戦後の激動期にあった日本の政治・経済のブレーンとして活躍しながら、田舎での充実した百姓生活。

そんな彼の生い立ちと経歴の華麗さったら、半端ないです。
実家は兵庫の大金持ち。あの時代にケンブリッジ大学に私費留学、しかもそもそも留学前の17歳頃にはすでに車を乗り回してたそうで、巨人の星の花形満に驚いてた私たちってなんだったの?って感じです。まあ、花形は中学生か小学生で車を乗り回していたのでそれに比べればもしかして普通?かもしれませんが、当時の日本って道路交通法はどうなっていたんでしょう。

ところで次郎の父親もハーバード大とドイツのボン大学に留学してたとか。ということは明治初期に海外留学、しかもアメリカとドイツに。
「坂の上の雲」と同時代ですから、確かに海外留学は多く、明治期に海外留学した日本の若者は公費・私費合わせて2万4千7百人だったそう。とはいえ日本の若者の中ではひと握りのエリート、または大金持ちの子供しか行けなかったはず。次郎の父はそのひとりだったわけですね。

妻の正子は伯爵家令嬢で、十代の数年間をアメリカで過ごし、アメリカでは女子の最難関の大学に合格した才媛。家の事情で入学せず帰国しましたが。正子の父もまた海外留学組。このドラマでの正子役は中谷美紀ですが、おそらくはまり役でしょうね。

ドラマの中で見る自宅の建物や調度品、そしてファッションが洒落ていて、次郎と正子のセンスのよさに驚くとともに、どこから買ってきてるの?アメリカ時代の物?とちょっと疑問に思いました。
特に無相荘(戦争が激しくなる前に田舎暮しするために買ってからずっと暮らした家)は茅葺き屋根の日本の農家らしい家だけど、建具がどこか洋風なテイストで、まるでイギリスのコッツウォルズの家みたい。庭の黄緑色に茂った木々の葉が揺れてさわやかな風が吹いてくる縁側。今は記念館になり娘さんが館長をしてらっしゃるそうなので、いつか行ってみたいです。→旧白洲邸 武相
ドラマロケ用のセット

同じくセット
そして、夫婦の会話がときどき英語になるような二人だけれど、日本人としてのアイデンティティを大事にしてるところが素晴らしいです。

白洲次郎役の伊勢谷友介は実際の次郎より顔が細長いようですが、英語がうまいし、物怖じしない、でも繊細なところもある次郎のキャラがよく似合っていました。十代の次郎を演じていた高良健吾のきかん防で繊細なティーンエイジャーぶりも良かったです。

実際の白洲次郎も写真で見るとアングルによってはイケメンで、野良仕事もしてたから中年太りもなしの引き締まった身体でそれに身長もあの時代で175cm。欧米人と対等に渡り合った次郎は心意気だけでなく見た目でも引けをとらなかったのでしょうね。

このドラマを通して、自分の知らなかった激動の昭和初期の日本を垣間見ることができ、近衛文麿や吉田茂など名前は知っているけどその政策等について興味もなかった総理大臣について少しでも知ることができたのも良かったです。

近衛文麿はリベラルな思想の持ち主だったのにもかかわらず、首相としてあの太平洋戦争を止めることができず、日本がずるずると破滅に向かってしまいました。そうなる前に次郎が苦言を呈したのに、撥ね付けられ日本国民は本当にどん底を味わうこととなりました。このドラマの中だけでも3回は次郎が近衛文麿に進言したエピソードがありましたがことごとく却下されました。次郎のどの意見も、将来を見据えた正しい意見だっただけに、聞き入れられずに憂慮したとおりの悪い方向に行ってしまい、次郎はどれほど無念だったでしょう。それでも、次郎は近衛文麿を見捨てることなく、彼の苦悩に寄り添っていた様子だったことに感動しました。

また、伯爵家令嬢って、子育ても家事もしなくても別に誰からも咎められないのね、と思いました。
以前ダニエル主演の「バトル・ライン」でもイギリスの貴族の奥方は子育ても家事もせずパーティー三昧の日々を送っていました。貴族の女性の役割って後継を生んだり、社交したりが主なんでしょうかね。
でも、次郎はそんな正子をひとりの独立した人間、自分のライバルとして敬意を抱いており、そんな正子が妻だからこそ、次郎もがんばれたのかもしれません。

ほかに印象的だったエピソードは、次郎に農業を教えてくれた農家の青年に赤紙が来たくだり。このエピソードには泣きました。次郎が持てる者としてノブレスオブリージュ(noblesse oblige「高貴なる者に伴う義務」)を観念的でなく心から実践するきっかけとなったかもしれません。

「坂の上の雲」を見ても感じたことですが、今の日本や私たちがあるのも先人たちの国の発展を思う心と努力の賜物だと思い知りました。

ちょっと残念だったのは、音楽が全く印象に残らなかったことでしょうか。

せっかくDVDを買ったのだから、またちょくちょく見たいと思います。特典映像もまだ全部見てないし。付録のブックレットも読まなくては。

ほかにも色々感じるところはあったのですが、いま思いついたことだけ書いてみました。

2 件のコメント:

  1. このドラマ、見たいです。
    伊勢谷さんが主役っていうのも魅力ですね。

    レンタル屋さんにはないのかなあ~
    まさか、ようちゃんの所まで借りに行けないしね~(笑い)

    大正時代や昭和初期のお金持ちの生活は
    とても興味あります。
    また、機会があれば探してみますね。

    まったく、知らなかった人の情報ありがとう!

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  2. 伊勢谷さん、良かったですよ~。
    やっぱり才気煥発でどこかやんちゃそうな
    ところなど役に合ってましたね。
    50代位の頃を演じていている時はあまりにも若々しくて「ええっ?」とは思いましたが、
    実際白洲次郎さんもその頃はあまり老けなかっ
    た様子ですし、まあいいかと思い直しました。

    レンタル屋さんにDVDあるといいですね。
    なんならうちまで借りにこられますか?
    出雲大社参拝も兼ねて。(・∀・)

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