2009年5月8日金曜日

最近読んだ本

◎『鴨川ホルモー』万城目 学・著
 私は中学校の読み聞かせボランティをしているのですが、中学生が自分で読書をする手助けもしたいと思い、中一生たちに勧めるのにいい本はないかと今中2の娘に聞いたところ、『鴨川ホルモー』を勧めてくれました。この本は、玉木宏主演でドラマ化された『鹿男あおによし』を書いた万城目学のデビュー作です。
 実は一年くらい前から、娘から「面白いから読んでみたら?」と勧められていたのですが、なかなかその気になれませんでした。でも人に紹介するからには自分も読まなくてはなりません。というわけで、遅ればせながら、ようやく読んだ次第です。
 さて、内容ですが、本の表紙の裏に書かれた紹介文(以下参照)からどんなイメージが湧きますか?
 このごろ都にはやるもの、勧誘、貧乏、一目ぼれ。葵祭の帰り道、ふと渡されたビラ一枚。腹を空かせた新入生、文句に誘われノコノコと、出向いた先で見たものは、世にも華麗な女(鼻)でした。このごろ都にはやるもの、協定、合戦、片思い。祇園祭の宵山に、待ち構えるは、いざ「ホルモー」。「ホルモン」ではない、是れ「ホルモー」。戦いのときは訪れて、大路小路にときの声。恋に、戦に、チョンマゲに、若者たちは闊歩して、魑魅魍魎は跋扈する。京都の街に巻き起こる、疾風怒涛の狂乱絵巻。都大路に鳴り響く、伝説誕生のファンファーレ。前代未聞の娯楽大作、碁盤の目をした夢芝居。「鴨川ホルモー」ここにあり。
 読んでみた感想は、「久々にさわやかな青春グラフィティを読んだわ~。」です。
「ホルモー」とは何か?まあ、上の記述にもほのめかされていますが、一種の戦闘ゲームです。でも、ある儀式と訓練をした人にしかできないし、普通の人にはその存在は秘密というゲームなので、この小説は一種のファンタジー小説でもあるのかな。
 全体的に、知的な語彙と、今時の若者言葉が絶妙なバランスで用いられているのが、ところどころでクスッと笑わせてくれます。そんな文体が大学生の生活の雰囲気とよくマッチしています。また、いろいろ出てくるネタが、「あるある!」といちいち共有できる大学生の日常生活。 私は25年前に地方国立大生でしたが、あの空気は良くわかり、懐かしいです。主人公たちも、著者も、あの名門京都大学の学生ですが、親近感を持ってしまいました。
 270ページほどの話ですが、初めの3分の1はちょっと退屈でした。でも、中盤からどんどん話に引き込まれて行きました。
 映画の方も先日家族みんなで見に行きましたが、まあまあ面白かったです。原作を読んでいなかったらまた、感想も違ったかもしれません。

 著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)万城目 学1976年生まれ、大阪府出身。京都大学法学部卒。2006年本書で第4回ボイルドエッグズ新人賞を受賞しデビュー。同作は「本の雑誌」エンターテインメント第1位となり、ベストセラーに。2作目『鹿男あをによし』は直木賞候補となった。

◎『ホルモー六景』万城目 学・著
 またまた娘に勧められて、連休中に読んだのですが、これはホルモー経験者たちが主人公の短編集です。『鴨川ホルモー』のサブストーリーになっていて、主に京都大学以外の学生たちにスポットライトが当てられています。そして、歴史上の人物や、文学者についての創作エピソードを絡めた感動的な内容になっている話も数話あります。『鴨川ホルモー』を読んだ人にはぜひ『ホルモー六景』の方もお勧めしたいです。

◎『山椒大夫』森鴎外・著
 「安寿と厨子王」のお話として大体のあらすじは知っている話なので、鷗外作品の中では取っ付きやすかったので読みました。
 本ネタの、中世の芸能であった説経節の「五説経」と呼ばれた有名な演目の一つ「さんせう大夫」では、安寿の凄惨な拷問シーンや山椒大夫一家が処刑されるシーンがあるそうですが、鷗外はそう言った部分はカットしたり変えて書いていました。
 母親が世間知らずなために、簡単に悪い奴にだまされて、子供もお付きの人もみんな酷い目に遭ってしまい、なんとも残念です。
 そんな境遇に押しやられた安寿ですが、その芯の強さと勇気、自己を犠牲にしてでも弟や親を思う気持ちには心を打たれます。
 そして最後は弟・厨子王の成功と母親との感動的な再会。悪役の山椒大夫一家にも復讐するのでなく、みんなが幸福になるように図らう厨子王。このあたりが鷗外流なのでしょうか。
 
◎『なぜ日本人は劣化したか』香山リカ・著
 もうこの10年くらい気になっていたこの国の状態はまさに「劣化」と言う言葉がぴったり、と言うわけでつい購入してしまったのですが…。
 全体的にこの手の新書によくある、著者の独断と偏見に基づく、こじつけパターンで書かれています。でも、私も感じていた不安の一部を言葉にしてもらったのは間違いないです。
 印象に残ったのが、「一息200字の時代」。
何の事かと言うと、雑誌などで一つのテーマについて、以前は人が一息で読めるのは800字と言われていたのが、今はその4分の1までに下がっているとのこと。それ以上長くなると、読者から「読みにくい」「何を言っているのかわからない」とクレームが来て大変なのだそうです。
 でも、そうなると、キャッチコッピーの羅列みたいな内容になるわけです。結局読者は「理由や背景などどうでもいいから、結論部分だけを教えてほしい」と求めるようになっていると考えられます。
 なるほどな~、そうかもね~、と心当たりを探りながら、妙に納得しました。  
 
 

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